インフレと株価にはどのような関係があるか

資産運用

多様化した資産ポートフォリオを構築して、リスクを分散するためには、それぞれの資産が特定の経済状況の変化によってどのような価格変動をする傾向があるのかを把握しておく事が重要です。

今回は、インフレーションという経済環境の変化が起きた場合に、それが株価に与える影響を見てみたいと思います。

インフレとは

インフレとは物価の上昇の事をいいます。通常は、様々な商品やサービスの価格をまとめた指標であるCPIを使って測定します。世界的に先進国では、現在、低インフレの時代が続いていますが、昔はもっとインフレ率が高かった時代がありました。

米国では、1979年、インフレ率は11%となっています。そしてこの傾向は1980年代まで続きました。インフレ率が11%というのは、例えば年間400万円の給料があって、そのお金を貯金しないで400万円すべて消費する人がいたとしたら、その人が翌年もまったく同じ生活をしたとしても440万円以上の生活費がかかる事になります。もし、給料もインフレに応じて10%以上昇給していなければ赤字になって生活できなくなってしまうという事です。

インフレと株価

インフレの株価への影響について考える前に、金融商品の評価について一つの前提を置きたいと思います。

それは、株式を含むすべての金融商品の価格は、将来の収入(キャッシュフロー)の合計を現在価値に直したものであるという事です。

そして、現在価値は、「将来の収入」と「金利(これにインフレが反映される)」を考慮して計算します。

例えば、あなたは宝くじに当選しました。当選金は1年後に受取る場合100万円、今すぐ受け取る場合は96万円です。もし、あなたが今すぐ支払いの必要な借金を抱えていない状況で合理的に判断するならば、1年後の100万円の現在価値を計算して、今すぐ受け取る場合の96万円と比べる事になります。

現在価値は、銀行に預金するだけで得る事ができるようなリスクの低い金利で割り算する事で計算されます。例えば預金金利を3%としましょう(今は銀行にお金を預けてもそんな金利はつきませんが)。1年後の100万円の現在価値は、100万円÷(1+0.03)=97万円となります。つまり1年後に100万円を受け取った方が現在価値が高いので有利という事になります。

それでは次に、上記の前提にプラスして、2%の期待インフレ率があるとします。通常、インフレ率の上昇は、銀行の預金利率の上昇を引き起こすので、もともとの3%の利率に2%を加えて5%となったとします。この場合の1年後の100万円の現在価値は95万円(100万円÷1.05)となるため、先ほどと結論は逆になり、96万円を今すぐに受け取った方が得という事になります。

なぜこのような事が起こるかというと、割引率が高くなればなるほど現在価値は減少する事になるからです。

これと同様の事が株式の価値にも起こります。つまり、株価は企業の将来キャッシュフローの割引現在価値なので、インフレにより割引率が上がるという事は、株価にとっては下落要因となるという事です。

インフレが株価に与えるポジティブサイドの効果

インフレは、株価に対してプラスの影響も与えます。それは、株価の現在価値を計算する二つの要素のうちの将来キャッシュフローを増加させるという影響です。

例えば、あなたがパン屋さんだとして、強い需要または、小麦の不作などなんらかの理由でインフレが起きているとします。その時、インフレに対応するために、あなたはもともと500円で売っていたパンを550円で販売する事になるかもしれません。一方で、原料コストも上昇する事になりますが、売上とコストの差額である利益についても同様の割合で増加する事になります。

これが、企業にとっては将来キャッシュフローの増加を意味し、株価を上昇させる要因となります。

つまり、インフレは、将来キャッシュフローを増加させ(株価の上昇要因)、一方で金利も上昇させます(株価の下落要因)。このため、本来であれば理論的には上昇要因と下落要因が相殺して、株価に影響はないことになります。

なぜ、インフレになると株価が下落するか

本来であればインフレが株価に与える影響は、プラス影響とマイナス影響が相殺された結果、なくなるはずですが、多くの場合、予想インフレ率を上回るようなインフレが起こった場合、株価の下落を招きます。

これは、インフレによる経済の悪化を投資家が懸念して、株価に対してプラスの影響である、キャッシュインフローの増加を考慮せず、マイナスの影響である金利の上昇のみに着目した結果として株価が下落している事が考えられます。

もう一つの理由は、インフレ率の予想外の上昇は、投資家に景気の過熱感を知らせる「炭鉱のカナリア」の役割をしているという事が考えられます。急激なインフレ率の上昇はビジネスサイクルの中で今が天井なのではないかという懸念を投資家に与えます。

まとめ

新型コロナウィルスによるリセッションは、今後、インフレをまねくのか、デフレをまねくのか定かではありません。しかし、経済が回復しないままインフレになる、いわゆるスタグフレーションが起これば、企業の将来キャッシュフローは減少し、金利はインフレにより上昇する訳ですから、株価の下落は避けられないと思います。

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