CAPM式の中で使用されるベータ値の計算

資産運用

ベータ値は、CAPM等を使用した株価分析を実施する中で対象資産、または対象ポートフォリオのボラティリティの度合いを判断するために用いられる指標です。市場全体のボラティリティとの関係において相対的に対象資産のボラティリティがどの程度かを表します。市場全体のボラティリティはベータ値1.0という値を持ち、それと比べて、対象資産が市場のボラティリティからどのくらい逸脱しているかにより数値的にランク付けされます。

ベータ値とは何か?

ベンチマークとなる株式市場全体の値動きよりも大きく変動する個別株式のベータ値は、1.0よりも大きくなります。逆に、対象となる個別株式が市場全体よりも小さい動きをするならば、その株式のベータ値は1.0よりも小さくなります。

高ベータ株はリスキーである一方、潜在的に高リターンの可能性があります。一方、低ベータ株はリスクは小さいですが、通常、リターンも小さくなります。

つまりベータ値は、投資家が目標とするリターンを達成するためにどの程度のリスクを受け入れるか判断する時の指標として役立ちます。

ベータ値の計算方法

ベータ値を計算するために必要なものは以下の二つです。①対象となる資産(個別株)と市場全体のリターンの共分散、②市場全体のリターンの分散

ベータ値の計算を式で表すと以下のようになります。

ベータ値=共分散÷分散

「共分散」は二つの株がどの程度一緒に動くかを測定するものです。つまり対象となる個別株と市場全体のリターンがどの程度連動するかを表しています。プラスの共分散は2つの株式が連動して上昇または下落している事を意味します。一方、マイナスの共分散は、2つの株式が連動せず反対に動く事を意味しています。

そして「分散」は、計算対象の株式の変動が、その平均からどの程度振れ幅があるかを表すものです。このため対象株式のボラティリティの測定に使われます。

ベータ値を計算する式は、特定期間におけるリターンの共分散(個別株と市場全体との)を市場全体の分散で割って求められます。特定期間における関係性に基づくものなので、その期間を長くとるか短くとるかにより、導かれるベータ値が異なってくる事になります。

ベータ値を計算してみる

ベータ値は、個別の株式の標準偏差を市場全体の標準偏差で割り算し、その結果と個別株と市場全体の相関係数を掛け算する方法でも求める事ができます。

ここで、ABC株という架空の株のベータ値を計算してみます。直近5年間のデータによるとABC株と市場全体の相関係数は0.8。そしてABC株のリターンの標準偏差は24%、市場全体のリターンの標準偏差は31%だったとします。

ABC株のベータ値は以下の式で求められます。

ABC株のベータ値=0.8×(0.24÷0.31)=0.6

この例では、ABC社の株式は市場全体よりもボラティリティが低いと言えます。このベータ値が示している事は、理論的には、ABC社株は市場全体より40%もボラティリティが低いという事です。

次に、最初に紹介した共分散と分散を使ったベータ値の計算をしてみます。

例えば、過去5年のデータでXYZ社の株式と市場全体の共分散は0.035だったとします。そして市場全体の分散は0.013だとします。この場合のベータ値の計算は以下のようになります。

XYZ社のベータ値=0.035÷0.013=2.69

この計算結果はXYZ社のボラティリティは理論的には市場全体より169%高いという事になります。

まとめ

ベータ値はその企業が属するセクターによって大きく変わるものです。いわゆるディフェンシブ銘柄のベータ値は1より小さくなりますが、ハイテク株を中心とした高成長株については1より大きなベータ値となる事が多く、高いリターンが期待できる一方でリスクも大きいです。

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