多様化した資産ポートフォリオを構築して全体のリスクを低減するためには、資産クラスごとの価格変動の特徴を理解しておく事が重要です。
つまり、特定の経済環境の変化が起きた時に、その資産クラスの価格がどのように変化する傾向があるのかを把握する事ができれば、逆の値動きをする資産クラスを組み合わせる事によりポートフォリオ全体のリスクを低減する事が可能です。
今回は、債券価格が経済成長率の変化によりどのように変動する傾向があるのかを見てみたいと思います。
経済成長は国債にどのように影響するか
「金利」というものをお金を調達するのにかかるコストと考えてみます。
経済が順調に成長している時は、消費活動は活発で、企業も個人も資金調達(借入)の需要が高い状態です。この高い需要はお金の調達コストである金利を上昇させます。
加えて、経済が強いときは、通常、「需要>供給」となるとインフレが起こるので、中央銀行が過度のインフレを懸念する場合、政策金利を上昇させます。この事もまた、国債の金利の上昇につながります。
結果的に、国債は強い経済成長により利回りが上昇し、債券価格は利回りとは逆の方向に動くため下落します。
その他の債券と経済成長の関係
すべての種類の債券は、影響の大小はありますが、国債の利回りの影響を受けています。米国債は最も安全な投資とみなされているので、米国債の利回りは、その他の債券の利回りの土台となります。
しかし、上記で述べたように、強い経済成長は国債にとっては価格を下落させる要因として働きましたが、国債以外の債券(適格社債、ハイイールド債、新興国債券など)にとっては、強い経済成長は価格の上昇要因となる傾向があります。つまり国債利回りの影響を受けると言いながら、国債とは逆の方向に動くという事です。
通常、国債以外の債券の利回りは国債利回りより大幅に高いです。このため、変動幅が比較的少ない国債利回りの影響はその他の債券に与える影響が小さくなります。例えば利回りが8%のハイイールド債があったとして、米国債の金利2%が2.2%になった影響は、そのハイイールド債にとっては小さいものとなります。
それよりもその他の債券の利回りに大きな影響を与えるのは、信用格付けです。信用格付けは、債券の発行先が債務不履行(デフォルト)におちいるリスクを評価するものです。債券の発行先がよりデフォルトする可能性が低くなったと判断されれば、デフォルトのリスクに対して付加されていた金利が下がり、結果として利回りが低下し、その債券の価格は上昇する事になります。
つまり、強い経済成長により、企業や新興国の財務状況が改善すれば、企業や新興国に対する信用が上がり、債券価格が上昇するという事になります。結果として、強い経済成長は国債にはネガティブに働きますが、その他のハイイールド債、新興国債などにはポジティブに働くという事です。
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