アメリカがイールドカーブコントロールを採用したらどうなる?

資産運用

イールドカーブコントロール(YCC)は、中央銀行による長期金利の目標設定をいいます。金利目標を達成するために、必要な数の国債を購入または売却して調整します。

この金融政策は、通常、FRBが実施している方法である、短期金利(FFレート)を設定する方法とは大きく異なります。

YCCの支持者は、短期金利をゼロにして、長期金利を低くキープする事により、より効果的な経済刺激となり、リセッションの予防やリセッションになった場合のインパクトを減少させる事ができると主張しています。

この主張は、前FRB議長であるバーナンキやイエレンも支持しています。

イールドカーブコントロールと量的緩和の違い

2008年のリーマンショックによるリセッションに対処するためにFRBは、巨額の債券購入を通じて金融システムに流動性を供給しました。これにより債券価格を上昇させ、その結果として長期金利、借入コストを低下させました。これがいわゆる量的緩和(QE)です。

しかし、リーマンショックの際は、FRBは長期金利に特定の目標値を設定していませんでした。一方で、YCCを実施する場合は、FRBは特定の長期金利目標を設定し、その目標を達成するために必要な量の債券を購入する事になります。

YCCの実例

YCCの実例として代表的なものが二つあります。

一つは、第二次世界大戦中の米国です。第二次世界大戦の戦費をまかなうために米国政府は巨額の借入を実施していました。しかし、政府債務の増大が、金利上昇をまねき、債務の返済負担が増加する恐れがありました。

このため、FRBは1942年から1947年まで、政府の借入コストを低く維持する事を目的として、特定の目標金利を達成するように国債を購入しました。当時の注目すべき点は、FRBは比較的、控えめな量の債券購入により目標金利を達成できたという事です。

より直近の実例では、日本銀行が2016年に、それまで実施していた量的緩和政策からYCCへと移行しました。日銀は10年国債の金利目標を0%に設定し、国債を購入しました。もし、10年国債の金利が目標範囲を上回って上昇したら、日銀は、債券の利回りを下げるために国債を購入します。

YCCのメリットとデメリット

日銀のYCC採用の経験をふまえて、FRBもYCCを採用する事で、QE(量的緩和)よりも、より小さいバランスシートで金利を下げる事ができるのではないかと主張する人もいます。

しかし、YCCは債券に投資する投資家にとっては、利回りが悪化するというデメリットがあります。年金基金等の機関投資家はポートフォリオの債券への投資割合が決まっているため利回りが悪くなっても債券への投資は行う必要があります。

また、銀行のように長短金利差の利ザヤで稼いでいる企業にとっても収益を圧迫する原因となります。これが、日本の銀行のPBRが長らく1未満である原因かもしれません。

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