理論株価を算定する時に使うCAPMって何ですか?

資産運用

CAPMとはキャピタルアセットプライシングモデルの頭文字をとったもので、分散投資を行っても消去しきれないリスク(システマティックリスク)と期待リターンの関係を表すものです。この指標は主にリスク資産の適正価格の算定に使われます。

まず、CAPMの算定式を見てみます。

期待リターン=リスクフリーレート+ベータ値×(市場全体の期待リターン-リスクフリーレート)

投資家は、投資対象に対して「リスク」と「貨幣の時間価値」に対する見返りを求めます。ベータ値は、市場の平均的なリスクに対してどれだけ追加でリスクをとるのかを表しています。ベータ値は市場全体のリスクプレミアム(市場全体の期待リターンからリスクフリーレートを除いたもの)と掛け算されます。そして、その積に対してリスクフリーレートが加えられます。

その結果、導き出された値は、資産価値を評価する時に、投資家によって要求されるリターンまたは割引率として使用されます。CAPMの利用目的の一つは、現在の株価が期待リターンを考慮した時に適正に評価されているかを確かめる事にあります。

例えば、A社株の株価は現在100ドル、配当利回りは3%だったとします。そしてこの株のベータ値は1.3だとします。これは市場全体のリスクよりリスキーだという事を意味します。この時にリスクフリーレートが3%、市場全体の期待リターンが年間8%だとします。

この前提の上でのA社株式のCAPMに基づく期待リターンは以下のようになります。

9.5%=3%+1.3%×(8%‐3%)

この、期待リターンを用いて、将来の期待配当と評価益を予想される保有期間に渡り割引いたものと、現在の株価である100ドルとを比較し、現在の株価が公正に評価されているものかを確かめます。

CAPMの問題点

CAPM式の前提には実際には成り立っていないと考えられる仮定があります。それは①株式市場は競争的で効率的(企業に関連する情報は瞬時に全体的にいきわたる)②これらの市場は合理的でリスク回避的な投資家によって支配される、というものです。

しかし、実際には情報に偏りはありますし、投資家のすべてが合理的でリスク回避的な判断をしているわけではありません。

それにも関わらず、この前提に基づくCAPM式は広く利用されています。その理由はシンプルで、投資案を比較する際に、簡単に比較できるからです。

この他にも問題点はあります。CAPM式の中にはベータ値が出てきますが、これは株式のリスクは株価のボラティリティによって測定できるとの仮定からくるものです。しかし、上昇方向の値動きと下落方向への値動きは、リスクの点でイコールではありません。株式の値動きは正規分布を前提としていますが、実際には正規分布していません。

また、リスクフリーレートに関して、証券の保有期間を通じて一貫して維持されるとの前提の上での計算を行っていますが、実際にはリスクフリーレートは変動しており、もし10年間の間に何倍にもなるのであれば、割引いて求められる現在の株価は本来もっと低い株価になる可能性があります。

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