一般的な商品と同様に、株式市場も需要と供給により株価が決まります。ある株について、需要が増えるほど株価は押し上げられます。また、ある株について需要に比べ供給の方が多く、人気があまりない状況だと株価は低くなります。
一方で、企業の理論的な価値は、将来、その企業が獲得するキャッシュフローの割引現在価値と等しくなるとされています。投資家はこの理論価値を一つの尺度として株式取引を行いますが、それに加えて市場の様々な要因により需要と供給の関係が変化し、株価は変動していきます。
理論株価という一つの尺度を持つことで、需給の偏りによる極端な過大評価、または過小評価を識別する事ができるという利点があります。ここでは一般的な理論株価の計算方法について取り上げたいと思います。
企業価値を考える
投資家は、ある企業について、自らが投資する価値があるかを何を見て判断しているでしょうか?その一つの要因は、もちろん現在の利益です。しかし、現在の利益だけではなく、投資家は通常、それを超えてさらに長い目で見た時の企業の収益性を見ています。
つまり、株価は企業の現在の収益性だけでなく、将来の成長を踏まえた、投資家の期待が反映されています。
企業の理論的な株価を計算するのに使われる一般的なモデルに「配当割引モデル」というものがあります。配当割引モデルの基礎となる考え方は、①「企業の将来の配当の合計額を現在価値に割り引いたもの」と②「現在の株価」は等しい、というものです。
ゴードングロースモデル
配当割引モデルには、いくつかの異なるタイプが存在します。もっとも一般的なものの一つに、ゴードングロースモデルがあります。
これは、1960年代に米国のエコノミストであるMyron Gordon氏によって開発されました。このモデルは下記の式で表されます。
株式の現在価値=一株当たり配当 ÷ (割引率-成長率)
例えば、Aという企業は現在、配当を一株当たり2ドル払っています。そして、割引率(投資家が要求するリターンレート)は、5%、期待される配当成長率は3%です。
A社の株式の理論価値は以下のようになります。
2ドル ÷ (0.05-0.03)=100ドル
ゴードングロースモデルによれば、もしA社の株が市場で120ドルで取引されていたら、それは過大評価されていることになり、逆に90ドルで取引されていたら過小評価されている事になります。
ゴードングロースモデルの限界
ゴードングロースモデルは、配当が一定成長を永続的に続けることが前提となっています。しかし、配当が安定して一定成長する事はとても珍しいことです。ビジネスサイクルや突発的な危機により配当の成長率は変動します。このため、このモデルを使用できるのは、安定した成長を長期間にわたりみせている限定された企業だけかもしれません。
二つ目の問題は、モデルの中で使われている割引率と成長率の問題です。もし、要求される割引率が配当の成長率よりも低い場合、式にあてはめると結果はマイナスの企業価値となってしまいます。
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